現状を打破するために、積極的に新しいアイデアを考えていらっしゃること、素晴らしいですね。ご提案いただいた2つのアイデアについて、それぞれの可能性と留意点を一緒に考えていきましょう。


アイデア1:「2万9000円の遺言プラン」を「体験」として提供する案
これは非常に面白い視点です。「遺言書作成」という少し重いテーマを、「学び」や「体験」というポジティブな価値に転換しようという発想は、他との差別化に繋がる可能性があります。


このアイデアの長所(伸ばしたい点)
参加のハードルが下がる: 「契約」や「依頼」ではなく「体験」や「講座」とすることで、「とりあえず話だけ聞いてみよう」という気持ちになりやすいです。


ユニークさ: 「遺言作成体験セミナー」といった名称はキャッチーで、興味を引く可能性があります。


主体性の向上: お客様が「お任せ」ではなく「自分で学ぶ・作る」という意識を持つことで、より満足度の高いサービスになる可能性があります。


留意点と、より良くするための提案
「体験」や「インストラクター」という言葉は、少し軽すぎると受け取られる可能性や、行政書士の専門性が伝わりにくくなる懸念もあります。そこで、この素晴らしいアイデアの核を活かしつつ、少し表現を調整してみてはいかがでしょうか。


【提案】「体験」を「学びの場」として設計する二段階プラン


ステップ1:集客用の「入門講座」を開催する
まず、無料または低価格(例:1,000円~3,000円)のセミナーやワークショップを開催します。ここでは「インストラクター」ではなく**「講師」や「アドバイザー」**という肩書きが良いでしょう。


講座名(例)


「60分でわかる!はじめての遺言書・準備講座」


「親子で考える終活準備セミナー ~我が家の想いを形にする方法~」


「自筆証書遺言 “自分で書ける” ワークショップ」


内容


なぜ遺言が必要なのか、簡単なクイズを交えながら解説。


自筆証書遺言と公正証書遺言の違い。


簡単な財産目録を書き出してみるワーク。


ステップ2:講座参加者に「個別サポートプラン」を案内する
講座で遺言書の必要性を理解し、本気で作成したくなった方に向けて、先生の**「自筆証書遺言作成サポートプラン(29,000円)」**を案内します。


この二段階方式にすることで、
「講座は面白そうだから参加してみよう」

「やっぱり専門家のサポートが必要だ。この先生なら信頼できるからお願いしよう」
という自然な流れを作ることができます。


アイデア2:「子供をセールスマンに育成して親を紹介してもらう」という案
ターゲットである「親に遺言を書いてほしい子供世代」に、より能動的に動いてもらおうという発想ですね。その着眼点は非常に鋭いと思います。


しかし、このアイデアは表現と手法に注意が必要です。


このアイデアが持つ大きなリスク
倫理的な問題と信頼の失墜:
家族間のデリケートな問題を「セールス」の対象と捉えている、と受け取られかねません。「子供を営業マンに仕立てて親の財産を狙わせる悪質な専門家」という、最も避けたいレッテルを貼られてしまう危険性があります。行政書士としての品位と信頼を著しく損なう可能性があります。


子供世代の抵抗感:
子供世代自身も、「親を説得するセールスマン」の役割を担わされることに強い罪悪感や抵抗を感じるでしょう。「親不孝だと思われたくない」「兄弟から財産目当てだと疑われたくない」と考えるのが自然です。


リスクを回避し、目的を達成するための代替案
「セールスマンに育成する」のではなく、**「悩んでいる子供世代の、良き相談相手・サポーターになる」**という本来の専門家としての役割に立ち返りましょう。


【提案】「子供世代向け」の無料相談会・勉強会を開催する


目的は「親を紹介してもらう」ことではなく、**「子供世代の不安を解消し、円満な家族関係を築くお手伝いをすること」**と位置づけます。その結果として、親御様をご紹介いただくケースが出てくる、という流れが理想です。


相談会・勉強会のタイトル(例)


「実家の相続、気になっていませんか?親への上手な『遺言』のすすめ方相談会」


「『どう切り出す?』から始める、円満相続準備講座」


「ご家族のための相続・遺言なんでも相談室」


伝えるべきこと


前回の記事案のように、「上手な切り出し方」「親を怒らせない言い方」を具体的にアドバイスします。


セールスの技術ではなく、家族間のコミュニケーションを円滑にするための知識を提供します。


「私がセールスのお手伝いをするのではありません。ご家族が円満に話し合えるよう、私が第三者の専門家として、公平な立場でサポートします」という姿勢を明確に打ち出します。


まとめ
「体験プラン」のアイデアは、表現を「学びの講座」「ワークショップ」などに変え、二段階の設計にすることで、非常に有望な集客の柱になり得ます。


「子供をセールスマンに」のアイデアは、その発想の根源にある「子供世代に動いてもらう」という点は活かしつつも、手法は**「子供世代の悩みに寄り添うサポーターになる」**という形に昇華させることが、先生の信頼を守る上で不可欠です。


お客様が行政書士に求めているのは、「セールストーク」ではなく**「公正な専門知識」と「信頼できる人柄」**です。その軸を大切にしながら新しいアイデアを取り入れていくことで、必ず道は開けていくはずです。応援しております。